気になった英語問題4 否定語の後のorなどの等位接続(2016 横浜翠嵐など)

かつての横浜翠嵐高校の自己表現検査(いわゆる特色検査)の選択肢に、次のような表現があります。

 So he could not decide to stay there or go out.

否定語+A or B「AもBも…でない」と、AとBのどちらも否定することになるという典型的な表現。これは学校の教科書にも出てくるものの、なぜか割と適当に解釈している生徒が多い印象です。

We cannot go to theaters, movies or any other kinds of entertainment.
(Total English  中3  P.98)

高校数学のようにベン図をかくなどして、この説明をすれば本当は良いのでしょう。しかし、相手が中学生ともなるとこのやり方はあまり効率的ではなさそうなので、結局「Aさんは相手がイケメンか金持ちかなら、たとえどんなに性格が悪かろうとお付き合いします。そんなAさんにB君が告白したところ、みごとにフラれてしまいました。さて問題です。そんなB君ってどんな奴?」といった、ベタで使い古された仮定から説明することが多いかと思います。まあこんな極端な例でも、イメージはしやすいようで「イケメンでも、金持ちでもない!」という力強い答えがすぐに返ってきます……。

英語と数学は案外似ているところもあります。たとえば、最初の文であれば、could not decide { to stay there or  (to) go out } のように、「決められなかった」ことを or が結び付けているわけですが、まるで分配法則のようにも処理できます。なんにせよ、等位接続詞を見たら、いったい何と何が結びついているのかをしっかりと考えて読み進めていきたいところです。

We can enjoy sports like snowboarding, or making animals or buildings with snow.

この英文は京都の公立入試問題ですが、この2つの or の働きがどうなっているのか理解できていますか?

最初の or は、enjoy の目的語をつないでいて、それが snowboarding のようなsportsmaking ~であることがわかります。また、2つ目の or は、animals buildings snow make するということを示しています。まとめると、enjoy sports (like snowboarding), or making animals or buildings <with snow>となります。コンマのありがたみを感じますね。

 An octopus came out of its tank at night, climbed into another tank nearby, ate the fish that was in that tank, and then moved back into its own tank.

2019年の東京工業大附科技高の長文より。or 同様、and 見ても「なにが等しい関係なのか?」と考えながら読まなくてはいけません。修飾箇所は多いものの、それらに臆することなく、動詞の過去形( came, climbed, ate, moved )が並んでいることから、これらが等しく結び付けられているのだ、と考えましょう。タコの一連のアクションが頭に浮かんできたでしょうか。これぐらいの and のつなぎは、公立でも出題されています。

 We are all like the clay Buddha covered with a shell of hardness, and under each of us is a ‘golden Buddha,’  a ‘golden Christ’ or a ‘golden essence,’ which is our real self.

次は2013年の巣鴨高の長文。私立高校入試ということもあり、and のあとには under each of us の倒置がありますし(いわゆるMVS)、そのあとに関係代名詞の非制限(非限定)用法が使われています。中学生にとってはだいぶ重たいものになっていますが、ここでの and or のつなぎ自体は比較的シンプル。

 The theory of binary opposites holds that narratives are driven by conflicts between two opposing forces such as heaven versus earth, nature versus culture, or heroes versus villains, and that myths attempt to overcome or resolve these conflicts.

最後に、高校入試ではなく2019年の国際基督教大学より。構造主義の父ともいわれるクロード・レヴィ=ストロースによる神話の二元論的解釈に関連する箇所です。さすがに語彙レベルは大学入試といった感じですが、文の構造自体はこれまでに記したものと基本的には変わりありません。

最初の or conflicts between two opposing forces の具体例である such as 以下の例示 ( heaven versus earth, nature versus culture, heroes versus villains )をつなげる役割があります。 and The theory of binary opposites holds の後ろにあるthat節をつなげています。2個目の or は、不定詞をつないでいますね。

holds  that narratives are driven by conflicts between two opposing forces (such as heaven versus earth,nature versus culture,or heroes versus villains), and that myths attempt { to  overcome  or  resolve these conflicts }となります。

なお、myths の前にある that は「あの(その)~」といった訳になりません。仮に、そのように解釈してしまったとしても、一応修正はできます。まず、 that後ろの attempt に三単現の s がついていないことからそれが不可算名詞ではないことは明らか。どうやら見た目からして、myths 可算名詞の複数形である可能性が高そうです。そこで「あれ、複数形の前で『あの(その)~』となるのならば、 that ではなく those になるのでは?」と頭を使えたらしめたもの。必然的に最初の解釈にいきつくわけです。

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